平成31年度民法の相続法改正のポイント ~自筆証書遺言の方式緩和~
〇 はじめに
年137万人が亡くなる「大相続時代」となり、約40年ぶりに民法の相続法分野が大きく改正されました。この見直しの背景には、高齢化社会の進展、親子関係や夫婦関係に対する国民意識の変化があるといわれています。
その改正項目の1つとして、自筆証書遺言の方式が緩和されました。今回の改正項目のほとんどは2019年7月1日から施行されていますが、この自筆証書遺言の方式緩和については、先行して2019年1月13日から既に施行されています。
今回は、「自筆証書遺言の方式緩和」について詳しくご説明したいと思います。
〇 従前制度の内容
民法第968条第1項は、自筆証書遺言をする場合には、遺言者が、遺言書の全文、添付する目録も含め日付及び氏名を自書(自ら書くことをいいます)して、これに印を押さなければならないものと定めています。
〇 改正の概要
今回の改正により、自筆証書で遺言を作成する場合でも、その負担を軽減するため、例外的に、自筆証書に相続財産の全部又は一部の目録(以下「財産目録」といいます)を添付するときには、その目録について自書しなくてもよいことになりました。
これにより、パソコンで作成した目録や通帳のコピーなど、自書によらない書面を添付することによって自筆証書遺言を作成することができるようになりました。
また、自書によらない財産目録を添付する場合には、遺言者は、その財産目録の各ページに書面押印をしなければならないこととされています。
1 財産目録について
土地や建物、預貯金、有価証券等を種目ごとにリストアップした一覧表を財産目録といいます。
遺言書が多数の財産について遺贈をしようとする場合には、例えば、本文に「別紙財産目録1記載の財産をAに遺贈する」や「別紙財産目録2記載の財産をBに相続させる」と記載して、別紙として財産目録1及び2を添付するのが簡便です。
2 財産目録の書式について
遺言書目録は法律上、作成の義務はないため、書式についても決まっていません。
書式は自由で、遺言者本人がパソコン等で作成するほか、遺言者以外の人が作成も可能です。また、土地についての登記事項証明書を財産目録として添付することもできます。ただし、上記の通り、財産目録の各ページに書面押印する必要があることに注意が必要です。
この改正によって、自筆証書遺言の作成件数が増加し、記載不備による無効化の防止につながると思われます。ただし、自筆証書遺言は、方式に違反した遺言は無効となってしまいますのでその点には留意していただく必要があります。
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