国税不服審判所が、平成30年4〜6月分の裁決事例集No.111を公表しました。
(1) 概要
裁決事例集No.111には、国税通則法関係3件、所得税関係4件、法人税関係6件、登録免許税関係1件、消費税関係2件、国税徴収法関係2件の合計18事例が掲載されています。今回は、そのうち贈与税の更正の請求に係る1事例を要約してお伝えいたします。
【国税通則法】
○贈与税の更正の請求
・ 平成30年6月22日裁決
(平成24年分贈与税の更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)
《ポイント》
・ 本事例は、更正の請求を提出することができる者は納税申告書を提出した者に限られ、第三者が債権者代位権又は取消権の行使として更正の請求を提出することはできないと判断したものです。
《要旨》
・ 国税通則法第23条《更正の請求》第1項は、更正の請求をすることができる者として納税申告書を提出した者と規定しており、その趣旨は、申告納税方式では、納付すべき税額は課税要件に関する事実関係に最も通じている納税者自らの申告により確定することが原則とされており、その税額が過大であった場合の是正手続も、納税申告書を提出した納税者自らが行うことが申告納税方式に適合するからであると解される。
また、納税者の債権者等の第三者が更正の請求をすることができるとすると、更正をした場合には納税者の課税標準等又は税額等に係る情報を当該第三者に知らせることになり、国税通則法第126条及び国家公務員法第100条《秘密を守る義務》第1項に規定する守秘義務に抵触することとなるが、その解除を規定した法令は存在しない。したがって、国税通則法は更正の請求をすることができる者を納税申告書を提出した者に限定している、と解するのが相当である。
《参照条文等》
・国税通則法第23条
【参考】
本メールでご紹介した国税不服審判所の公表裁決事例は、次の場所に掲載されています。
なお、各事例のポイントをお知りになりたい場合は下記の画面から「裁決事例要旨」を、裁決全文を確認されたい場合は「裁決事例」をそれぞれクリックしてください。
◯国税庁ホームページ
・トップ→国税庁等について→組織(国税局・税務署等)→国税不服審判所→公表裁決事例集等の紹介→公表裁決事例集→公表裁決事例→平成30年4月〜6月分(裁決事例集No.111)
(http://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/111.html)
税法トピックの最新記事
- デジタル資産の相続
- 被相続人の老人ホーム入居と小規模宅地等の特例
- 令和元年度の税制改正のポイント ~配偶者居住権の創設~
- 令和元年10月から相続税もe-Taxが利用可能に ~国税庁 相続税申告書の代理送信等に関するQ&Aを公表~
- 預貯金の払い戻し制度
- 医療法人の事業承継 その1~高齢化する医療機関経営者の現状~
- 平成31年の公示地価が公表されました!
- 平成31年度税制改正のポイント 【4】 結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し
- 平成31年度税制改正のポイント 【2】 特定事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の特例の見直し
- 平成31年度税制改正のポイント 【1】 個人版事業承継税制の創設
- 強まる富裕層への包囲網
- 平成29事務年度における相続税の調査の状況について
- 平成29年分の相続税の申告状況を要約
- 相続税申告に際して失敗しないポイント
- 文科省が教育資金贈与の非課税制度恒久化を平成31年度税制改正要望で求める方針
- 遺産分割協議中に生じた相続不動産の賃料の帰属について②
- 遺産分割協議中に生じた相続不動産の賃料の帰属について①
- 宅地の評価単位
- 財産評価基本通達とは
- 預貯金を遺産分割対象とする最高裁判断の影響